起源

美大生の頃、鴨居玲の展覧会へ行き、入口から激しく心が揺さぶられた。

あの感動は、今も思い出すと震えるほど心の奥底に刺さっている。

さらに遡ると、

幼少期に出会った武者小路実篤の詩、『一個の人間』はわたし自身のテーマ。

人は心を大切にすると、幸せになれるんだと思った。 

そしてわたしは、その詩にずっと励まされて来た。

心とは?と、大きな問いかけをくれた師のような存在でもある。

わたしはその答えを、見つけ出したいと思って日々描き続けている。

自分は一個の人間でありたい。

誰にも利用されない

誰にも頭をさげない

一個の人間でありたい。

他人を利用したり

他人をいびつにしたりしない

そのかわり自分もいびつにされない

一個の人間でありたい。

 

自分のもっとも深い泉から

もっとも新鮮な生命の泉をくみとる

一個の人間でありたい。

誰もが見て

これでこそ人間だと思う

一個の人間でありたい。

一個の人間は

一個の人間でいいのではないか

一個の人間。

 

独立人同志が

愛しあい、尊敬しあい、力をあわせる。

それは実に美しいことだ。

だが他人を利用して得をしようするものは

いかに醜いか。

その醜さを本当に知るものが一個の人間。

 

武者小路実篤